遺言書や遺産分割協議の内容に納得できない場合は?
被相続人が亡くなると、遺産はどのように分けるのでしょうか。
遺産の分け方としては、
- 法定相続分(法律で定めた相続分に従って分けること)
- 遺産分割協議
- 遺言
以上がありますが、何といってもまずは、遺言書の有無を調べましょう。
なぜなら、これらの内、遺産の分け方で一番優先されるのが遺言になるからです。
公正証書遺言であれば公証役場に検索を行います。
公正証書遺言は、公証役場でデータベース化されていますので、全国どこの公証役場でも検索できるのです!(ただし、平成元年以降に作成された公正証書遺言に限ります)
自筆証書遺言の場合は、貸金庫を契約していれば貸金庫内、他にも自宅などを隅々まで探しましょう。
仏壇の引き出しなどにある場合が多いです。
せっかく書いた遺言が発見されない場合を考えると、被相続人の生前に遺言書の内容はともかくとして、遺言を書いた人は遺言書の有無だけでも相続人に伝えておきましょう。
さて、探しても遺言書がないことが分かったら次の段階です。
遺産分割協議を行います。
遺産分割協議とは相続人全員で遺産をどのように分けるかを話し合うことです。
「遺言書のないことが確定」→「遺産分割協議を行う」という順序が大事なわけです。
どういうことかといいますと、遺産分割協議をした後に遺言書が見つかったとしたら、場合によっては遺産分割協議が無効となってしまうからです。
優先順位は遺言書が1番なのです。
ですので、必ず遺言書の有無を確認した上で遺産分割協議を行うようにしてください。
以上が遺産の分け方についての原則となります。
遺言書の内容に納得できない場合
被相続人の遺言書は最優先されるとお伝えしました。
遺言書は被相続人の最終意思なので、相続人どうしの話し合いで行われる遺産分割協議より優先されます。
ですが、実際に財産を受け継ぐのは相続人です。
そのため、遺言書の内容が最優先されるのが原則ではありますが、例え遺言書があったとしても、相続人全員で合意できれば遺言書の内容と異なる割合で遺産を分けることも可能なのです。
ただし、以下の条件があります。
遺言書の内容と異なる遺産分割協議が可能となる条件
- 被相続人が遺産分割を禁じていないこと
- 相続人全員が、遺言の内容を知った上で、これと違う分割を行うことについて同意していること
- 相続人以外の人が受遺者である場合には、その受遺者が同意していること
- 遺言執行者がいる場合には、遺言執行を妨げないか、もしくは、遺言執行者の同意があること
上記の1ですが、民法の次のような条文があります。
民法907条 (遺産の分割の協議又は審判等)
共同相続人は、次条(908条)の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
他にも税務上の注意点がありますので、遺言書の内容と異なる遺産分割協議を検討しているのなら、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
また、仮に遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合はどうでしょう。
その場合でも、上記の条件を満たしていれば、遺産分割協議書の内容を追認(事後的にOKとすること)して遺言書の内容と異なった形で遺産を分けることが可能となります。
一度成立した遺産分割協議の内容に納得できない場合
次に、遺産分割協議をやり直すことはできるのでしょうか。
一度は相続人間の話し合いで決まった遺産分割協議ですが、後で冷静になって考えてみると納得できなくなってしまったような場合です。
相続人の間で遺産分割協議がまとまった後では、再協議は難しいケースもあります。
遺産分割の再協議を行うには、相続人全員が「改めて遺産分割協議をして再分割してもよい」という合意が必要です。
相続人全員がすんなりと再協議に応じてくれれば問題はありません。
ただし、もし再協議ができたとしても、利害関係がある第三者がいる場合は、その人の権利を侵害することはできません。
例えば、最初の遺産分割協議によって不動産を取得した相続人が、その不動産を売却した場合の買主などがいた場合などです。
それ以外にも、遺産分割の再協議の内容によっては、贈与税など税法上の問題が発生することもありますので、再協議を安易に選択すると想定外のリスクを負うことになります。
遺言書があったけど、相続人の全員が納得しているでの遺言書と違う分け方で相続したい場合や一度は遺産分割協議は成立したけどもう一度やり直したいなど、お悩みでしたら、是非一度ご相談にいらしてください。