生死不明の相続人がいる場合(失踪宣告)
行方不明の相続人がいる場合に、不在者の財産管理人を選任して手続きを進めることが考えられます。
これによって、相続人と不在者財産管理人で遺産相続について手続きを進めることが出来ます。
ただ、行方不明になって生死も定かでない場合にはどのようにすれば良いのでしょうか。
これには「失踪宣告」という方法も考えられます。
失踪宣告とは
失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、又は戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)は、家庭裁判所は、申立てにより、失踪宣告をすることが出来ます。
失踪宣告の手続き
失踪宣告の手続きは、利害関係人(不在者の配偶者、推定相続人、財産管理人、受遺者など)が不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります。
申立てに必要な費用は、収入印紙代(800円)と連絡用の郵便切手代(約3,000円)、官報公告料(約5,000円)です。
申立てに必要な書類は以下のとおりです。
- 申立書
- 不在者の戸籍謄本
- 不在者の戸籍附票
- 失踪を証する資料
- 申立人の利害関係を証する資料(親族関係であれば戸籍謄本)
この中で、「失踪を証する資料」というのは、以下のようなものです。
- 警察署長の発行する家出人届出受理証明書
- 返戻された不在者宛の手紙
などです。
失踪宣告がされると
前述のとおり失踪宣告がされると、生死不明の者は死亡したとみなします。
この「みなす」というのは法律的に非常に強い言い方で、そのようになることを言います。
つまり、法律上死んだことになるのです。
ですので、失踪宣告がされると生死不明だった者について相続が発生します。
相続人中の一人に失踪宣告がされるともう一つの相続が発生するのです。
生死不明者について遺産や生命保険金が有る場合は、遺産相続が発生します。
失踪宣告後の手続き
失踪宣告の審判が確定した後は、10日以内に申立人は戸籍法による届出義務がありますので、市区町村役場に失踪の届出をしなければなりません。
届出には、審判書謄本と確定証明書が必要になります。
確定証明書は審判をした家庭裁判所に交付申請をします。
失踪宣告後、生死不明だった者が生きていた場合は?
失踪宣告の審判が確定し、生死不明者が死亡したとみなされて遺産相続手続きも終了した後に、実は生きていたというケースではどうすればいいでしょうか。
この場合、単に生きていることが分かっただけではダメで、本人又は利害関係人が家庭裁判所に失踪宣告の取り消しを申し立てなければなりません。
失踪宣告が取り消されても、すでに相続してしまった遺産を返さなければならないのでしょうか。
不動産であればすでに売却してしまったり、預金でも使ってしまっていることもあるでしょう。
この場合は「現に利益を受けている程度」で返還すれば足りるとなっています。
具体的に書くと長くなるので割愛しますが、基本的には使い込んでしまったものは返す必要がなくなります。
まとめ
- 相続人中に生死不明者がいる場合では、「失踪宣告」という方法がある。
- 失踪宣告により、生死不明者を死亡したとみなされる。
- 失踪宣告後に生死不明だった者が生きていることが分かった場合は、失踪宣告を取り消すことが出来るが、すでに相続した生死不明者の財産に関しては「現に利益を受けている程度」で返還すれば足りる。