認知症発症後の相続税対策
認知症発症後も家族信託を使って相続税対策を行うことができるのかを説明します。
認知症発症後の財産の運用は原則NG
認知症が発症すると判断能力が低下したり無くなってしまいますので、不動産などの財産を管理したり売却等の処分をすることができなくなります。
特に地主の方などアパート等の収益不動産を持っている場合は、自分自身が亡くなった後の相続税を心配していることも多いと思います。
成年後見制度では、後見人は原則として本人の財産を維持管理することしかできないので相続税対策のために財産を運用してはいけません。
例えば、更地のままだと相続税の評価が高くなるからといってアパートを新築するようなことはできないのです。
事例
町田父郎さんには子どもが二人と奥様がいますが、財産額が大きく、二次相続が発生した際には子どもが負担する相続税が高額になることが明らかでした。
そこで、相続対策のために家族信託を活用しながら、子ども二人の名義で金融機関からの融資を受けながら収益不動産の建築を検討しています。
家族信託の設計
町田父郎さんの一番の目的は、相続税の節税です。
このまま父郎さんが亡くなると、奥様と二人のお子様が財産を引き継ぐことになります。
配偶者には、相続した際に相続税の負担が少なくて済むように、相続税が軽減される特別措置(配偶者控除)が法律で用意されています。
そのため父郎さんが亡くなった後の相続では相続税支払いの大きな問題は発生しません。
しかし、次に父郎さんの奥様が亡くなり子ども二人が財産を相続する際には、配偶者の特別控除などがないため、課税される相続税が莫大になることが予想されます。
父郎さんと奥様が亡くなった後の相続対策(=二次相続対策)としてなんらかの手段を講じる必要があります。
土地甲の委託者を父郎さん、受託者を長男、土地乙の委託者を父郎さん、受託者を次男としておき、それぞれが収益物件の建設ができるように金融機関での融資の手続きやハウスメーカーとの契約ができるような状況にしておきます。
受益者には、父郎さんが亡くなるまでを父郎さん自身、その後をそれぞれの土地について第2次受益者として長男、次男に設定をします。
家族信託を行うメリット
認知症になってしまうと、建物を建築するための契約できなくなることや、銀行からの融資契約ができないなどの問題が発生する可能性があります。
また、建築後の収益物件の管理も父郎さんご本人では不安です。
家族信託の契約をすることで、これらのリスクを回避し、安心して相続税対策を行うことが可能となります。