相続対策
将来の相続に対して不安を抱えている方、そのご家族の方は非常に多いと思います。
相続対策として今までは遺言書を残すことくらいしか方法がありませんでしたが、新しい相続のかたちとして家族信託が脚光を浴びています。
相続対策を検討される際の心配事
相続対策を考えるくらいなので、何か心配事があると思います。
ご相談の中で多いのが次のようなものです。
- 前妻や前夫の連れ子がいる
- 内縁の配偶者、海外居住者、行方不明者、認知症の方、不仲の親族がいるので、遺産分割協議がスムーズに行われないことが予想される
- 特定の人に相続させたくない/特定の人に特定の財産を相続したい
こんなときに活用できるのが、家族信託です。
遺言を使った財産承継では、遺言者の死亡のタイミングで誰に何を相続されるということしか決めることができません。
家族信託では、生前に将来起こる遺産分割内容を設計し、あらかじめ信託をしておくことで財産承継をスムーズにさせることができます。
自分の財産に関して、生前は財産管理の権利のみを移し、財産から受ける利益は自分に設定しておき、自分が亡くなった後は自分の子どもに利益を受ける権利を引き継がせる方法です。
家族信託契約を結んでおけば、遺言よりも拘束力が強く、生前贈与よりも柔軟性のある方法を取ることができます。
事例:一族の資産流出を回避したい場合
父親(85歳)が長男(65歳)とその妻(63歳)と同居しています。
長男夫婦には子どもがいません。一方、別居している二男夫婦には子ども(父親の孫)が1人います。
その父親は自分が亡くなった後、長男夫婦には引き続き現在の土地で暮らしてもらいたいが、長男夫婦が他界した後は、先祖代々の土地でもあるので、孫(二男の息子)に承継してもらいたいと考えています。
家族信託の設計
この場合、父親を委託者とし、孫を受託者として、受益者連続型の信託契約を締結します。
その中で受益者を次のように設定します。
- 第1受益者:父親
- 第2受益者:長男(父親が亡くなった場合)
- 第3受益者:長男の妻(長男が亡くなった場合)
- 残余財産の指定先:孫(長男の妻が亡くなった場合)
これにより、民法の規定とは異なり、長男の妻の他界後は孫に財産が承継されるように父親自身が指定できるのが、信託契約の大きな特徴です。
家族信託のポイント
遺言を作成する場合、自分が亡くなった後に財産を誰に引き継ぐかだけは決めることができます。
しかし、その後次の代、その次の代までに財産の引き継ぐ相手を決めることはできません。
一方家族信託では、財産を次の代、その次の代と引き継ぎ先を連続させて決めることができます。
代々続く財産を自分の直系に引き継ぎたい場合には、家族信託契約を結ぶことがおすすめです。