相続放棄と固定資産税
※このコラムは動画でも解説しています。
相続放棄の効力は絶対的です。
民法939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
条文のとおり、相続放棄をすることによって、その人は初めから相続人ではなかったことになるので、遺産をもらうことも無いし、借金を引き継ぐこともないわけです。
そもそも「相続人ではない」わけですから。
でも、ちょっと注意が必要なことがあります。
固定資産税の納税義務者
不動産を所有していると固定資産税という税金を納めなければなりません。
毎年5月くらいになると市役所から通知がくるあれです。
市役所は所有者が変わるたびに都度確認してその人に通知するわけではなく、その年の1月1日に所有者であった人に対して、その年1年分の固定資産税の納付を求めます。
1月1日に不動産の所有者として市役所の固定資産税課税台帳に登録されている人が固定資産税の納税義務者となります。
「台帳課税主義」といって、地方税法で定められています。
ただし、課税基準であるその年の1月1日前に所有者が死亡している場合は現にその不動産を所有している人が課税義務を負うことになります。
相続放棄vs台帳課税主義
分かりやすいように事例で説明します。
事例
被相続人Aは平成27年11月1日に死亡した。相続人はBのみである。Aの遺産は自宅不動産があるが、借金も多額に及ぶため、Bは管轄の裁判所で、平成27年12月15日に相続放棄の申述をした。Bの相続放棄の申述は平成28年1月5日受理決定がなされた。
このような事例で、市役所の平成28年度固定資産税課税台帳にBが所有者して登録されてしまった場合、Bは固定資産税の納税義務を負うか?
原則として相続放棄したわけですから、払う必要はないと考えれます。
しかし、もし固定資産税課税台帳にBさんが登録されてしまった場合はどうでしょう。
結論として、Bさんは固定資産税を支払う義務を負うことになります。
相続放棄しているのにおかしなことだと思われますが、これには裁判所の判例があって、相続放棄しても固定資産税課税台帳に登録されている場合は固定資産税を支払わなければならないのです。
ただし、支払い損ということではなく、一旦は支払う必要があるのですが、真の所有者がいる場合はその真の所有者に対して求償(立て替えた分を支払ってねということ)することが出来ます。
この事例では相続人はBさん以外にいないので、相続財産法人(詳しく書くと長くなるので割愛します)から求償することになります。
以上のように、「年またぎの相続放棄」は注意を要する場合があります。
まとめ
- 相続放棄をすれば固定資産税の納税をする必要は原則としてない
- ただし、相続放棄後であっても固定資産税課税台帳に登録されいる状態で納税を求められた場合は納税義務が生じる
- 立て替えた固定資産税は真の所有者に対して求償することが出来る。
- 「年またぎの相続放棄」には注意を要する