相続放棄した後に誰も相続人がいなくなった場合
※このコラムは動画でも解説しています。
相続放棄をするとその相続については、初めから相続人では無いことになります。
ですので、相続放棄した人は最初からいないものと考えられるので、次順位の相続人へ相続権が移ります。
そして、その相続人が更に相続放棄すれば次の順位の相続人へと相続権が移って行くのです。
そうした結果、関係者全員が相続放棄することによって、相続人が誰もいない状態になることがあります。
こういった場合に、不動産や預金などのプラスの財産があった場合にその処理はどのようにすればいいのでしょうか。
被相続人に借金があるのであれば、債権者に渡してしまえばいいのでしょうか。
相続放棄した後にしてはいけない事
注意しなければならないのが、誰も相続する人がいないのだからと言って、遺産を管理している人が勝手に処分してしまう場合です。
処分というのは、遺産を売ったり、使ってしまったりすることです。
また、債権者に弁済してしまったりすることも処分行為になります。
処分行為をしてしまうと、例え相続放棄をしていたとしても、相続放棄が無効になってしまうので絶対にしないで下さい。
また、遺産の取得者がいなくなったから、管理している人のものになるという法律はないです。
「お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ」というのはジャイアンだけのルールです(笑)。
相続財産管理人に遺産を引き継ぐ
さて、ではどうすれば良いのでしょうか。
ずっと持っていれば良いのでしょうか。
それも困りますよね。
相続人が誰もいない場合に遺産の処分をするには、利害関係人(債権者や現在遺産を管理している人など)が相続財産管理人の選任申立てを裁判所にする必要があります。
文字通り、相続財産を管理する人を裁判所に決めてもらうのです。
裁判所には管理人候補者の名簿があるので通常は弁護士等が選任されます。
相続財産管理人が選任されたら、遺産を管理人に引き継がなければなりません。
相続財産管理人は、遺産を第一に債権者や受遺者、第二に特別縁故者へと弁済したり引渡したりします。最終的に受取人がいない遺産に関しては国のものになります。
というわけですので、相続財産管理人へ遺産を引き渡すまでは、現在手元にある遺産を引き続き管理しつづける義務があるのです。
民法第940条1項
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
相続放棄をする場合は、被相続人が債務超過であることがほとんどですので、第一順位の相続人が相続放棄をすれば、次順位の相続人も全員相続放棄することが普通です。
誰も借金を相続したくないですからね。
ですので、最終的に誰も相続人がいなくなります。
前述のとおり、マイナスの遺産である借金以外にプラスの遺産が残っているのであれば、相続財産管理人の選任の申立てをして、遺産の引継ぎまで考えなければなりません。
しかし、実際は価値のある遺産がある場合だと債権者が相続財産管理人の申立てをして、そこから弁済を受けることがあるのですが、遺産にほとんど価値のない場合(山林や古い家屋など)は債権者から相続財産管理人の申立てがされることはありません。
その場合でも、相続財産管理人が選任されるまでは、管理し続けなければなりません。
ですので、自分達で相続財産管理人の選任を裁判所へ申立てなければなりません。
このようなケースは専門家に相談されることをおすすめします。
まとめ
- 相続人が全員相続放棄をして相続放棄をしたら相続人がいなくなる。
- 相続放棄をした後に、遺産を処分してしまったら相続放棄が無効になるので注意。
- 相続人がいなくなった場合にプラスの遺産があれば相続財産管理人へ引き継がなければ、遺産の管理義務から逃れることができない。
- 相続財産管理人の選任が必要なケースは専門家への相談を検討すべき。