相続放棄をした後の自動車の処分について
※このコラムは動画でも解説しています。
相続放棄をすると、初めから相続人では無くなりなりますので、被相続人の一切の遺産や借金を相続することはありません。
多額の借金を抱えて被相続人が亡くなった後、相続人の救済手段として法律できちんと認められた有効な方法です。
ですが、借金を相続しない反面、いかに高額な遺産があってもそれを相続することは出来ません。
債権者を保護するためにも、相続人が「おいしい所取り」は出来ない仕組みになっています。
さて、そんな相続放棄ですが、相続放棄をする前であっても、した後であっても被相続人の遺産を処分してしまった場合は相続放棄をすることが出来なくなってしまいます。
具体的には、被相続人名義の遺産を相続人が私的に使ってしまったり、相続人間で遺産分割協議をしてしまったりするとアウトです。
自動車も勝手に処分してしまうと相続放棄をすることが出来なくなるので注意が必要なのですが、この自動車についてどのように処理するかがよく問題になります。
原則的な処理方法
まず、原則論です。
自動車は一般的には財産的価値があるものですので、勝手に処分してしまうと相続放棄が出来なくなります。
相続放棄をすると、遺産や借金を相続はしないのですが、その遺産を管理する人に引き継ぐまで遺産を自己のものと同様に扱う程度の注意義務で管理・保管しなければなりません。
知らんぷりは出来ないのです。
ずーっと遺産を持っているわけにもいかないので、最終的には相続財産管理人という立場の人を裁判所に申し立てて選任してもらいます。
相続財産管理人は被相続人の遺産を最終的には換価して、債権者等への弁済の原資とします。
被相続人の遺産が多い場合(不動産などがある場合)は債権者等がこの申立てを行うケースがあるのですが、債権者等からの申立てがなければ、相続人がこの申立てを行わなければなりません。
この手続きには予納金で数十万円から100万円程度かかり、そのお金は相続人のポケットマネーから出さなければなりません。
ですので、遺産が自動車だけという場合だと現実的には相続財産管理人の選任申立てを行うケースはあまりないと言えます。
ケース別の処理方法
ケースによっては必ずしも原則的な処理によらないでもいい場合も考えられます。
ですが、これらの方法が100%大丈夫という保証はなく、現実的に考えて良しとしても場合によっては遺産の処分と考えられることもあります。
私も立場的に「絶対」という言葉は使えませんので、その点はご了承下さい。
まず、自動車が新車で購入していたとしても5年以上の年数が経過していて、財産的な価値がないものの場合です。
自動車は持っているだけでも自動車税が掛かりますし、駐車場を借りていればその維持費も馬鹿になりません。
そういった場合にもいつまでも相続人が管理し続けるのはあまりにも酷ですので、こういった場合は廃車にしてしまっても問題は無いかと考えられます。
自動車税を滞納していて廃車に出来ない場合は相続人の持ち出しにはなってしまいますが相続人のポケットマネーで滞納分を支払えば、遺産の処分には該当しません。
次にローンの残がある自動車の場合です。
通常ディーラー経由で自動車ローンを組んでいる場合は、完済するまで所有権はディーラー側にあります。
所有権留保と言いますが、こういった場合は所有権は被相続人にはありませんのでそもそもこの自動車は被相続人の遺産ではありません。
ですので、ディーラーに連絡をして自動車を引き上げてもらいましょう。
まとめ
- 相続放棄をする(した)際に自動車の処分が問題になることが多い
- 自動車の処分は原則的には相続財産管理人へ任せる
- 古い自動車では、廃車にしてしまう場合も考えれらる
- 自動車ローンの残がある場合は、ローンの契約内容で所有権留保の特約があればディーラーに引き上げてもらえる